小糸侑と光(1)
仲谷鳰『やがて君になる』
が面白すぎるのでつついていきたい
主人公の小糸 侑(こいと ゆう)は人を好きになる気持ちが理解できず、そんな自分を変えたいと思っている高校一年生。そんな子が美人で黒髪ロン毛文武両道、人当たりが良く美人の先輩、七海 燈子(ななみ とうこ)に初対面で気に入られて2日目でキスされちゃったりとかしてあらあらという始まり方をする恋愛物語だ。これだけ読むとああそういう百合漫画ねみたいな感じなんだけど、この主人公、全然先輩になびかない。繰り返しても顔が良いだけでは小糸侑には届かない。
恋ができない小糸さんは、恋愛やその真っ只中にいる人を眩しいものとして捉えている。手の届かない星のようなものだと考えている。暗喩を多用するこの漫画の中でもトップクラスに多いのがこの光の描写だ。クライマックスを迎えつつある『やがて君になる』の、次号のサブタイトルは「光の中にいる」。
「月刊コミック電撃大王」4月号(2/27発売)には
— やがて君になる【公式】TVアニメBlu-ray&DVD好評発売中! (@yagakimi) 2019年2月20日
『やがて君になる』第39話「光の中にいる」が掲載されます。#やがて君になる #やが君 #yagakimi pic.twitter.com/WXSnvbmjZv
表紙で眩しそうな表情をしてるのが侑。この絵とタイトルがどれほどの衝撃なのかを味わい尽くすために、これまで小糸侑と光がどんな描かれ方をしていたかをほじくり返したい。とりあえず2巻まで。
1話
- 「少女漫画やラブソングのことばは キラキラして眩しくて(中略)わたしのものになってはくれない」
- 燈子に告白する男子生徒がキラキラ光って見える描写
- 物陰(文字通りの日影)からそれを見ていた侑は燈子の呼びかけで陽が当たる場所に飛び出す
- 自分に告白した男子からのライン画面が光る描写
- 日が差す所で友人2人と一緒に昼食を摂っていたはずが、自分だけ距離があり影にいる心理描写
- 返事をし兼ねている告白相手のライン画面が、消した後もキラキラと光る
- 「侑 どうかした?」「…… んっと」「ううん? どうもしないよ」先を行く友人2人が日向にいるが侑だけは日影にいる ※16話に同じセリフのシーンあり
- 告白を断る相手の台詞周りに光の効果
- 「だって私君のこと好きになりそう」と言う燈子の台詞に光の効果
3話
- 侑に手を握られて赤面する燈子に光の効果
- 特別を知っている燈子に置いていかれて暗い場所にいる心理描写
- 「……また まぶしい思いをするだけなのに」「なんで 構わないなんて言っちゃったんだろう」侑を好きでいることを許された燈子の顔に日が差す、次Pにも光の効果
4話
5話
- 燈子が自分を特別だと思う理由に触れて、ここで初めて侑の側にも星のような効果
1巻表紙
- 光源から考えれば陰になるはずの侑の顔は燈子からの反射のように同じ明度になっている
6話
- キスしたいと迫る燈子に眩しさを感じる侑
- 槇くんから「小糸さんもちゃんと七海先輩のこと好きなんだね」と指摘されて、「べつに 普通だよ…」と答える侑の全身が木漏れ日でまだらに照らされる描写
9話
- 自分が変われない(恋愛感情がわからない)ことをやだなと思う侑の全身が逆光で陰になっている
- プラネタリウムを天井に映して見上げ、光を消す侑の描写にインサートされる燈子の後ろ姿
10話
- 燈子の拒絶と同じタイミングでやってくる電車に日光が遮られる
2巻表紙
- 燈子に手を引かれて木陰から日向へと出て行く侑
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太字はわたしが特にグッときたところ。
特に6話の、本人が思いもよらなかった「七海先輩のことが特別」だという気持ちを第三者から指摘される場面で、侑は「べつに 普通だよ…」と口では否定する。否定するけれども顔は少し赤らみ、口元は書類で隠している。明らかに真実は別のところにありますよと言わんばかりの描写で、さらっと読んでても理解はできるけれど、この場面で光の当たり具合すら使って心境を表してることにわたしが気づいたのは何回か読み返した後だった。考えてみれば1Pブチ抜き大ゴマの全身像なんだから超重要なコマであることは当たり前なんだよ!ここでこの漫画に落ちた気がする。
こうしてまとめてみると1話の光の描写しつこいくらいやってるな。作者の仲谷さんと編集のクスノキさんはわかりにくいことを自覚してこの漫画を作り上げてるそうだけど、誰もが初見の1話ではこのくらいしないと読者には届かないのかもしれない。
3巻以降の続きは今日明日中にあげる。27日の最新話前までにはまとめ終わりたい。
→あげました