小糸侑と光(2)
仲谷鳰『やがて君になる』の主人公、小糸侑と光の描写についてほじくり返す記事。今回は3,4巻分。
1,2巻ぶんはこちら
13話
- 朱里と朱里の好きな先輩の相合傘を見送る侑の頭上部に影
- 燈子の登場に驚く侑のコマ、鼻の上に陰があることから分かるように光源が下方にあり、周りのトーン処理と相まってまるで侑自身が光っているように見える
- 「その嬉しいって」「どういう意味?」で燈子の拒絶の気配を感じ取った侑の顔に、それまで掛かっていなかった陰が出現
15話
- 自分は人を好きにならないという自覚のある槇と侑。そういう自分を肯定して他人の恋愛を見ることを楽しむ槇は開いた窓から身を乗り出して陽を浴び、侑は閉じた窓の手前で影の中にいる
16話
- 侑が見つめるリレーを走る燈子、走り終わった燈子の後ろ姿に日差しの効果
ここではっきりと侑の心境の変化が描かれる
- 「侑 どうかした?」「…… んっと」「ううん? どうもしないよ」 ※1話のリフレイン。友人との距離はもはや離れておらず、3人並んで日向に座っている。
- 燈子にキスをする直前、侑の頭上から差しこむ日差しのような効果 →ここを超えたらだめだ、と自制する侑
- 「心臓の音がする …わたしのじゃないな 先輩の音だ だってこれじゃ 速すぎるから」侑のモノローグに寄り添うように、1話で多用されていたものと同じ光の効果
16話直後の単行本おまけカット
- 雨は上がって虹が出ているのに、それに背を向けそっぽを向いて傘を差したままの侑
3巻表紙
- 13話最終コマを俯瞰で撮ったようなカットだが、本編とは逆に燈子が目を閉じ侑が空を見上げている。雨が上がって晴れ間が広がり始めていることは、裏表紙に描かれた水たまりの反射でわかる仕掛け
↑書籍版↑ ↓kindle版↓
17話
- 劇の脚本を読んだ燈子の心境を推し量りながら、夕焼け空を見上げる侑
18話
- サブタイトル「昼の星」表紙、短冊で口元を隠して座る侑、その後ろに何枚かの短冊がかけられた笹、さらに後ろに枠取りされて塗りつぶされたような黒い背景。その中に浮かび上がるいくつかの星。昼の星は目には見えない。以前はあれほど手を届かせたかった星がすぐ後ろにあるのに、口元を隠した侑は星を見ようとしない。
19話
- 表紙、陽を全身に浴びる燈子を薄布で隔てられた日陰から横目で窺う侑の姿
22話
- 表紙、燈子と背中合わせに座る侑。差し込む光に片目を開いている
- ベッドシーン(by寿美菜子@やが君ラジオ)、侑を自分の影に入れるように覆いかぶさる燈子
- 「ばか」「先輩のばーか」西日を正面から浴びて叫ぶ侑の言葉に隠されたモノローグ
- 侑の部屋のカーテン、これも星空?
- こよみに電話する侑のスマホからこぼれる光の粒
- 脚本、そして燈子を変えたいと決意する侑は燈子からもらったプラネタリウムの光をのぞき込む。星の光はもはや天井や壁ではなく、侑自身に映って光る。
22話直後の単行本おまけカット
- 麦わら帽子を脱いで、強い日差しに正面から向き合う侑
4巻表紙
- ……は佐伯先輩のターンなので特になし。燈子の花火持つ位置危なくない?ジャージ溶けそう
↑書籍版↑ ↓kindle版↓
太字は例によってわたしがグッときた部分。16話後と22話後のおまけカットの対比に気付いた時は震えが走った。それに16話のモノローグのあのエフェクト、この記事のために読み返すまで気づかなかったぞ!!!興奮がおさまらない!!
16話の「号砲は聞こえない」は3巻最後の話で、やが君は毎巻最後の話に山場をが来るように作ってあるそうだけどそれにしたってこの話は凄い。
侑と沙弥香の友情の成立。侑の心境の変化が1話の反復を用いた形ではっきりと読者に示される。しかしそれを認めてしまったら、今危うい形で成り立っている二人の関係が崩れてしまうことも描かれる。
負けたことにも気づかない=ゴールの号砲すら聞こえないほど燈子に惹きつけられてしまった侑は、同時に自分の心臓がスタートの号砲を鳴らしたことを認められない。表紙で耳をふさぐ侑の手に後ろからまた手を重ねてふさぐ人は本編ではあんなに無邪気にキスをねだってくるのに。
それからこの最後のモノローグ、原作では
「…わたしのじゃないな 先輩の音だ」だったのが
「わたしのじゃない。先輩の音だ」
と言い切る形になったのが、侑が自分の気持ちを押し込めてる感出ててアニメスタッフ最高に分かってる! フゥー!
フゥーといえば寿さん高田さんがラジオでよく言うエロ峠だけどこの回が素晴らしいのは最高にエロいからというのもあるね。見ては消し見ては消ししてたアニメ版、まんまとこの回から保存しておくようになった。